路地の奥にお豆腐やさんがありましてね
白いお豆腐がふわりんふわり~んと水槽に浮いてるんです。
その後ろで白いかっぽうぎ着たおばさんがあぶらげを揚げて・・・
今でも目を閉じるとその時の豆腐の白さや香ばしい油のかおりが浮かんできます。
夕暮れ時になると当時にしては交通量の比較的激しい道を渡っておつかいに行ったものです。
いつもは母と手をつないで行くのですが、たまにはひとりで行ったりもしました。
今から考えると、母がよくあの道路を私ひとりで横断させたものだと思います。
だってね、飼ってた猫や犬が私の覚えてる限りでは一匹づつ車に轢かれた恐ろしい道なんですもの
アルミの鍋を持たされてふらりよろりと寄り道しながら豆腐やのそばまで来た時

知らないおばあちゃんが二階の窓から顔を覗かせて
おつかいかい?偉いね~~
お腹空いてないかい?散らし寿司(炊き込みごはんだったかも・・・?)食べるかい?
当時は今みたいな控えめで遠慮深い性格じゃなく天真爛漫真っ正直だったので
うんっ!
ひとつ返事でトントンと階段を駆け上がりおばあちゃんの部屋で美味しいご飯をいただきました。
おつかいに行ったきりいつまでも帰ってこない娘を心配して、母が通りをきょろきょろしながら
こっちに向かってくるのを窓から呑気に眺めながら大声で
おかあさ~ん、こっちこっち♪
ご飯茶碗を持ったまま娘が知らないお宅の2階から手を振ってるんだから
母もさぞかし吃驚したことでしょうね。
家に帰ってごってりとお灸を据えられましたが、優しいおばあちゃんのことが忘れられず
しばらく経ったら又おばあちゃんちの2階に転がり込んで美味しい物を貰う
そんなヤクザな暮らしっぷり

そう言えば、記憶が断片的なんだけど
借り家住まいの若夫婦(この方達も知らない人)のおうちに行ってママがおつかいに行ってる間
赤ちゃんのお守をしててっと頼まれ教わった通り哺乳瓶で野菜ジュースを飲ませてあげて
こりって旨いのか?と思いこっしょり味見をしてみたら不味かった(笑)
な~んてこともあったっけ(苦笑)
今ではとても考えられないことですが、それだけ昔は人と人のつながりが厚く
向こう三軒両って今では死語になってしまってるような言葉がちゃんと生きていて
隣人を疑うなんてこともあまりなかったように思います。
ってか私って人間が根っからずぅーずうしいだけなのか(笑)
年齢の近いみさちゃんやまちこちゃん達と遊ぶようになって
おばあちゃんちに行かない日が続きました。
しばらくぶりにおばあちゃんちに行ってみると真っ暗で誰も居なくなっていました。
おばあちゃん、いったいどこに行っちゃったのかな・・・

優しいばあちゃんだったなァ